夏のむし探検の最注目ポイントといえば、なんといっても樹液。
でも、「樹液に虫が集まる」という話にはよく聞くけど、今まで見つけたことないなぁ、という方も多いのではないでしょうか。
樹液っていったいどこにあるの?どうしたら昆虫が見つかるの?ここでは、そんな疑問にお答えします。
Q:樹液酒場はドコにあるの?
A:まず、いい雑木林を見つけることが大切です。
いい雑木林とは、クヌギやコナラの木がいっぱいはえていて、下草刈りなどの手入れが行き届いた林のことです。
そんな林は、里山(=田や畑の裏にあり、そこにはえている木からまきや炭が作られたり、たい肥や木灰を� �くるための枯れ葉などが集められるところ)や、自然を活かしたタイプの森林公園などでよく見つかります。
都市近郊の森林公園でもいい雑木林が見つかる。これはクヌギを主体とした林。
クヌギの木の幹と葉はこんな感じ。
こちらはコナラ。
いい林を見つけたら、次はいい木を見つけること。いい木とは、「ある程度の樹齢を経ていて、幹に傷があり、しかも生命活動の活発な木」。見るからに健康そうで何の変哲もないキレイな木はダメで、幹がちょっとひねていたり、瘤上になっていたり、色が黒っぽかったり、樹皮がはがれていたりする木の方が、樹液の出ている期待が持てます。
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根元が瘤状になって樹液が出ているクヌギ。(左) 樹液が出ている木を見つけたら、幹の上部も見上げてみよう。そうすると、もっといいポイントが見つかることも多い。(右)
樹液の出ている木は、林の奥深くにはあまりなくて、林の周囲や、道から少し入ったあたりでよく見つかります。
また、北斜面よりも太陽光に恵まれた南斜面に多いようです。
昼間であれば、周囲を飛び回るハチやチョウの存在によって、樹液のありかを予測できます。
慣れてくれば、風に乗って漂ってくる甘酸っぱい「樹液の匂い」も強力な手がかりになります。
Q:イツさがせばいいの?
< b>A:風が弱くて蒸し暑い日が狙い目です。特に、雨が降った日の翌日は、虫たちもお腹が減っているのでチャンスです。
カブトムシやクワガタなど、夜の昆虫の観察なら、午後8時から10時ごろが一番いい時間帯です。
Q:どんなものを持っていけばいいの?
A:まず、軍手。樹皮で手を傷つけたり、幹についている毒毛虫に触ってしまったりすることを避けるための必需品です。甲虫類を手づかみするときにも役立ちます。
次に、ピンセット。狭い場所入りこんでしまったクワガタなどを引っぱり出すことができます。
それから、夜の観察なら、赤いセロハンを貼った懐中電灯。昆虫には赤い色があまり見えないので、相手� ��驚かさずに近づくことができます。手に持つ電灯よリヘッドランプの方が、両手が使えるので便利です。
頭にはヘッドランプ、首から紐がついた大きめの電灯をぶらさげ、ポケットにペンライト、という装備ならカンペキかも。
昼の観察には、コンパクトな双眼鏡を。高いところや近づきにくいところにある樹液の様子も観察できます。
服装は長袖、長ズボン、運動靴が基本スタイルです。
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Q:危険はないの?
A:ハッキリ言って危険は大いにあります。
一番危ないのはスズメバチの仲間。刺されると命にかかわることもあります。昼間の樹液ではたいてい見かけますので、刺激しないように注意してください。スズメバチがこっちを向いて、カチッ、カチッという威嚇音を出し始めたら、深入りせずに退散するようにしましょう。
特に、夏の終わりから秋にかけては気が荒くなるので要注意です。巣には絶対近づかないようにしてください。
スズメバチほどしょちゅうは見かけませんが、マムシやヤマカガシなどの毒蛇にも注意してください。� ��液観察では、どうしても藪の中に足を踏み入れることが多くなるので、彼らと接触する可能性も高まります。
その他、命にかかわるようなことはありませんが、幹に付いている毒毛を持った毛虫や、ウシアブなどの吸血昆虫にも注意が必要です。
また、特に、夜の山の中は、迷いやすく、転落の危険もつきまといます。
樹液観察には危険がいっぱい、との覚悟で、できるだけ大人が複数人数いるグループで行動するようにしてください。
昼間の樹液に多いオオスズメバチ。樹液のありかを教えてくれる道案内役でもあるが、非常に攻撃的なので、刺激しないように注意が必要。
Q:どんな昆虫が見つかるの?
A:樹液にはほんとうにたくさ� ��の昆虫が集まります。また、地方や標高によって訪れる種類が違うし、同じ場所でも季節や時間によって、ガラリと顔ぶれが変わります。
ここでは、東京や関西近郊の低山地で、7月頃によく見られる昆虫たちを、昼の部と夜の部に分けてご紹介します。
樹液酒場 昼の部
昼の部の注目はチョウの仲間。タテハチョウやジャノメチョウが多く見られます。甲虫類の中心勢力はカナブンたち。かっこいいカミキリムシの仲間もいろいろ見つかります。
うつは何ですか?
タテハチョウの仲間2種。左は日本の国蝶オオムラサキ。樹液に集まるチョウの中でもひときわ大きい。右は優雅な翅とそれにふさわしい名前を持つスミナガシ。口器が真っ赤なのが特徴。
地味だけど渋いデザインが魅力のヒカゲチョウ。ジャノメチョウ科の仲間には翅にたくさんの目玉模様を持つものが多い。
カナブン型の甲虫にも、カナブン、アオカナブン、クロカナブン、シロテンハナムグリなど、いろいろな種類がいる。これはアオカナブン。
カミキリ2種。左は、ハチに擬態しているヨツスジハナカミキリ。普段は花に来ていることが多いが、この日は樹液で見つけた。右は、国内最大のカミ キリムシ、シロスジカミキリ。大きな個体は体長6センチにもなる。
樹液酒場 夜の部
夜の部の主役は、なんといってもカブト&クワガタ。見つけた!と思っても、驚かせるとブ〜〜ンと飛び去ってしまったり、地面に落下してわからなくなったりするので油断は禁物。昼間のチョウに代わって、きれいで大きなガの仲間もたくさん見られます。
これはおなじみ、カブトムシのオス。樹液のよく出ている一等地を確保していることが多い。
ノコギリクワガタのオス。落下しやすい性質を逆に利用して、樹液の出ている木の幹を足で思い切り蹴飛ばすと、高いところにいたクワガタたちが落ちてくることも多い。
ガの仲間には、美しい後翅を持った種類が多い。昼間は翅をとじて休んでいるのでいたって地味だが、夜の樹液では個性的な後翅が観察できる。(左:ムクゲコノハ、右:シロシタバ)
夜の樹液ではバッタ系の仲間たちも目立つ。左は、キリギリスとコオロギを足して2で割ったような、その名もコロギス。右は、長い脚がちょっとブキミなマダラカマドウマ。
脇役たち
大きくて目立つ虫だけではなく、樹液ではそのほかの小さな昆虫たちもたくさん観察できます。わずかなすき間にもぐりこむのが得意な小甲虫や、痩身のヤセバエなど、独特の魅力をもった脇役たちにも注目しましょう。
左はホシアシナガヤセバエ。右� �ヨツボシケシキスイ。
ここでは樹液探検入門編として、底知れない魅力を持った樹液の世界の入り口をご紹介しました。
最初はなかなかうまく観察できないかもしれませんが、知識と経験を積めば、必ず結果に結びつきます。
みなさんも、ぜひ樹液の香りただよう雑木林に出かけてみてください。
(初出 「むし探検メール No.5」)
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